桜雨
記憶
満開の桜が誇る春の季節、山内家に、次女が産まれた。
彼女は「幸枝」と名付けられ、とてもかわいがられた。
ただ、彼女は山内家の三姉妹の中で、他の姉妹と比べ、体が弱かった。
ほとんど自分の部屋から出ることが許されず、
1日のほとんどをベッドの上ですごすことも珍しくはなかった。
学校にもほとんど通えず、
友達もほとんどいない。
遊び相手は、妹の幸花ぐらいだった。
しかし、彼女は幸枝の元気を吸収してしまったかのような、元気の塊で、
部屋に居るばかりの幸枝と違って、
外で遊びたいと言ってすぐに飛び出して行ってしまう。
幸枝も、外に行きたかった。
だが、それを父親を始め、女中や執事らが許してくれない。
特に、母親が病死してから、その目は厳しくなった。
そして、今、幸枝は21歳。
外の世界をほとんど知らないまま、山内家で暮らすものだと思っていた。
しかし、そこに、突然の知らせが彼女の耳に飛び込んできた。