桜雨


(・・・だけど、突然大正時代に来てしまって、


ほとんど喋ったことのない人と結婚しなきゃいけないなんて、


・・・私、どうしたら良いのかしら)


逃げようにも、どこへ逃げれば良いのかわからないし、


そもそもこの体では逃げることもできないだろう。


焦り、というよりも諦め、という言葉がとても近い心境だった。


(・・・もしかしたら私、夢を見ているのかしら)


その可能性もありえなくはない。


例えば、夢の中で有り得ないことが起きている時、


夢の中の自分は、それが現実であると錯覚している。


だから、もしかすればこれは夢の中の出来事で、


あと数時間もすれば夢から覚めて現実の世界に戻れるかもしれない。


(だったら、このまま身を任せてみるのも良いのかもしれないなぁ)


案外面白い世界も知れない。


そう思うと、さっきより気持ちは軽くなった。


< 25 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop