桜雨
目覚めた朝
不意に感じた光に、幸枝の瞼が刺激される。
うっすらとした光を感じ、彼女は目を開ける。
いつの間にかカーテンが開かれた窓から、
強い太陽の光が差し込んできた。
「おはようございます。ただいまレースのカーテンをお引きしますから」
彼女の横たわるベッドの隣から聞こえた声の主は、恐らくハナであろう。
寝ぼけた頭のまま、彼女は少しだけ起き上がった。
「お食事のご用意はいかがいたしましょうか」
「・・・少し、頂きます」
寝起き特有の声で小さく彼女がそうつぶやくと、
ハナは「かしこまりました」と言って部屋を早々と出ていく。
ぱたん、とドアが閉まる音がすると同時に、
徐々にではあるが、彼女の眠気も覚めてきた。
「・・・よいしょっと」
ほとんど筋力のない、細く白い腕で状態を起こしきると、
ネグリジェを纏ったままの身で、
ベッドから出ていく。
そして、彼女はその細い2本の足で、
レースのカーテンがひかれていなかった窓に向かう。
そして、その窓際にもたれかかりながら、
彼女は窓の外を眺めていた。
窓の外には、緑色の絨毯の上に、
美しく咲き誇る桜が、その枝を揺らして桜の花びらを舞い散らせている。
白い太陽の光に乗ってまい散る花弁は、ため息を吐かんばかりに華麗である。
彼女の2つの瞳にも、その光景が、映し出されていた。
すっと、細い腕が窓へと延びる。
しかし、すぐにその腕は、また元にあった所へと戻ってしまう。
「・・・あと、何回見られるのかしら・・・」
そう、彼女はひとりごちた。