桜雨
「アイツさ、・・・T大学目指すらしいよ」


「・・・え?」


今度は、彼女が驚く番だった。


大きな目をぱちぱちと瞬かせている彼女に向かって、彼はさらに言葉を続ける。


「だから、本格的に予備校通うらしくて。・・・サッカーも、夏休みで引退するって」


「・・・ウソ」


「嘘じゃないよ。この前、顧問にも退部届提出していたし」


彼女は、言葉を失っていた。


幼いころから、サッカーが大好きで、


「サッカー馬鹿」とまで呼ばれるほど、上手だったのに。


夢は?と聞かれれば、「W杯の出場」とまで豪語していたのに。


「・・・どうして・・・」


何故か、彼女はひどくショックを受けていた。


幼馴染とはいえ、他人の選んだ進路だ。


彼女が落ち込む理由は無いはずだ。


それなのに、彼女の心は、まるで突然冷水を浴びせられたかのように、


冷たくなっていた。


「さぁ、な。僕にも理由は教えてくれなかったから、


君に聞こうと思ってたんだけど・・・って、おい!HR始まるよ!」


考える間もなく、彼女は教室を出て行た。









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