桜雨

がらり、と隣の教室のドアを開ける。


まだ、HRは始まっていないから、教室は騒がしい。


「ちょっと!」


彼女はずかずかと教室の中へ入って行って、席に座り何かを読んでいる、


幼馴染の元へと駆け寄った。


「あれ?どうした?もうHR始まるんじゃ・・・」


言い終わらないうちに、彼女が言葉を押しつける。


「どうもこうも。どうしてサッカー止めちゃうの!?」


彼女の大声に、一瞬教室が静まり返る。


皆の視線が、2人に集中した。


「どうしてって。・・・予備校通うから」


「そうじゃなくて。なんでサッカー選手にならないのよ!」


「だって、T大学に入りたいから」


T大学は、言わずと知れた、日本で最も難関な国立大学である。


この学校でも、1年に1人合格者がいるかいないか、


それぐらいに、入試が難しい大学である。


「そんなこと、聞いてるんじゃないって!」


「・・・分かった。あとで、話そう」


彼がそういうと、少しだけ、教室が騒がしさを取り戻し始めた。


彼女は無理矢理教室に戻らされることになったが、


その日1日中、彼女は授業も友達との会話も、全て上の空となってしまった。
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