いけない恋
再婚
それがいけないことだっていうのはわかってた。
でも、好きなものは好きだった。
だから、諦めなかった。
今から10年前。
俺は母親の運転する車の助手席に乗っていた。
小学校6年生のときだ。
「ねぇ、どこに行くのさ」
俺が聞いても母親は答えない。
「……無視かよ」
それから一言も母親とは会話を交わさなかった。
いつのまにか眠りこけていた俺は、車から降ろされて見たこともない部屋で寝かされていた。
隣からは母親の声と、男二人の声が聞こえてくる。
「そうか。陽ちゃんにはまだ言ってないんだな」
陽ちゃん。
俺の
「陽太」
という名前をちゃん付けで呼ぶのは母親と同じ会社で働く光田さんしかいなかった。
「だって……言い辛いじゃない、再婚するなんて……」
(え!?)
俺は布団から身を起こして襖に耳を当てていた。
「あの子、お父さんっ子だったでしょ。それなのに急に事故で父親を亡くして……。まだ傷が癒えていないのに再婚するなんて言ったら、あの子がどんな顔するか怖くて……」
「それもわからなくもないけどねぇ、ちゃんと説明なしにここへ連れてきたのは……」
「いけないとは思ったけど、直接会って話を聞いたほうがイイと思ったから」
「まぁ、早紀子さんらしいけどね」
俺は襖の反対側でずっと話を聞いているしかなかった。
「ところで、雄一くんには?」
母親がお茶を少し口に含んだあと、訊いた。
「もちろん、説明済みだよ。雄一、入ってきなさい」
それが、俺と雄一兄ちゃんの初めての出会いだった。
でも、好きなものは好きだった。
だから、諦めなかった。
今から10年前。
俺は母親の運転する車の助手席に乗っていた。
小学校6年生のときだ。
「ねぇ、どこに行くのさ」
俺が聞いても母親は答えない。
「……無視かよ」
それから一言も母親とは会話を交わさなかった。
いつのまにか眠りこけていた俺は、車から降ろされて見たこともない部屋で寝かされていた。
隣からは母親の声と、男二人の声が聞こえてくる。
「そうか。陽ちゃんにはまだ言ってないんだな」
陽ちゃん。
俺の
「陽太」
という名前をちゃん付けで呼ぶのは母親と同じ会社で働く光田さんしかいなかった。
「だって……言い辛いじゃない、再婚するなんて……」
(え!?)
俺は布団から身を起こして襖に耳を当てていた。
「あの子、お父さんっ子だったでしょ。それなのに急に事故で父親を亡くして……。まだ傷が癒えていないのに再婚するなんて言ったら、あの子がどんな顔するか怖くて……」
「それもわからなくもないけどねぇ、ちゃんと説明なしにここへ連れてきたのは……」
「いけないとは思ったけど、直接会って話を聞いたほうがイイと思ったから」
「まぁ、早紀子さんらしいけどね」
俺は襖の反対側でずっと話を聞いているしかなかった。
「ところで、雄一くんには?」
母親がお茶を少し口に含んだあと、訊いた。
「もちろん、説明済みだよ。雄一、入ってきなさい」
それが、俺と雄一兄ちゃんの初めての出会いだった。