ひとりじゃない
ある日の授業合間の休み時間のこと。
「桃、ちょっといい?」
美緒だ。
あだ名で「桃」と呼ぶのは美緒しかいないので、聞いただけで誰かすぐに分かった。
「ん、どした?」
「ここで話すとあれだからさ、トイレ、いい?」
「いいよ。」
あたしは何だろうと思いながら、美緒について行った。
トイレに着くと、手洗い場で美緒は腕を組みながらあたしの方を見た。
「…美緒?」
あたしが不安な面持ちで美緒を見ると、美緒は話し出した。
「あんね…、有紗ね、桃の悪口めっちゃ言ってんだよ」
胸に突き刺さる言葉。
その先を聞きたくなかった。
嘘にきまってる。
優しくて、ギャルっぽいけどお姉さん系で、憧れの1人でもある。
いっつも相談にのってくれる、あの有紗が…?
そんなのウソ…。
嘘って言ってほしかった…。
でも、本当だった。