白と黒の意味

 黙ってわたしを見つめている。

 その目は真剣で、やさしかった。

 わたしは恥ずかしくなって伏し目がちになってしまう。


「松本先生が、「僕」がいいって言ったのは、違う自分になれって言うことじゃなくて、「俺」という壁を作っている自分をやめなさい、っていうことじゃないかな」


 うまく、言えない。

 鳥海くんが、息をのむ音が聞こえた。

 きちんと、わたしの言いたいことが伝わっているといい。


「本当の自分を隠さないで、ってことだと、わたしは、そう思う」


 わたしはそう言い終えると、そのまま瞳を閉じた。



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