CHIHIRO
手の震えが止まらなくて、うまくボタンが押せなかった。
扉の向こうではお客がドンドンとドアを叩いて叫んでいる。
ごめんなさい、ごめんなさいっ、
「千尋さん…」
やっと千尋さんの名前を見つけて、通話ボタンを押す。
早く…
僕は涙が堪え切れなくて、泣いてしまった。
目が腫れてる事も忘れて擦って、鈍い痛みにまた涙がでる。
『もしもしっ?かけ直す!!』
千尋さんは、この前と同じ様に電話を一方的に切ってすぐにかけ直してきた。
こんな時でも優しいんだなぁ…
『もしもし?会える?!』
「ち、ひろさん、どこに…」
涙が邪魔して、うまく話せない。