CHIHIRO
親父は離婚し、子供は居ない事になっている。
つまり僕は、実の父にすら存在が恥と思われているという事だ。
百合子さんが居る前で、そういう事を言ってほしくない僕は
黙って部屋に戻ろうとした。
「自殺する子供が増えているから、現代の子供がかかりやすい病気について取材したいそうだ。お前ちょっとこっちに来てみろ。」
でも、親父がこう言うから、しかた無くそばに寄る。
すると親父は、医者らしく僕の脈を計り始めた。
1分間がとても長く感じた。
「んー…ちょっと早いな。」
そう呟いて今度は僕の目を観てきた。
「焦点がずれてる。お前なんかやったのか?」
「関係ないでしょ?」
僕はほっといてほしくて、親父の手を振り払って部屋へ戻った。