CHIHIRO
“白いワンピースが着たい”
僕と千尋さんが付き合う直前に、僕が何気なく言った言葉。
千尋さんはちゃんと覚えててくれたんだ…
照れながらワンピースを着た。
紙袋の中には、薄いグレーのパンプスとデニム生地のジャケットも入っていた。
僕はそれを有難く身につけ、着ていた服を紙袋にしまった。
どんな顔して選んでくれたんだろう?
きっと千尋さんは顔を真っ赤にして、女物の店に入ったに違いない。
すきだなぁ
と改めて思った。
着替えが終わってさっきの場所に戻ると、千尋さんもお姉さんもびっくりした顔をしていて、何も話さなかった。
やっぱ、僕にはこんな女の子らしい格好、似合わないんだ…
でも千尋さんが選んでくれた服。
千尋さんの傍まで行って、千尋さんに
「この服、すごく可愛い。本当にありがとう!」
千尋さんは顔を真っ赤にして「あ、うんうん」とだけ言うと僕の手を取って美容院を後にした。
車に乗って街に向かう。
赤信号で停まった車のハンドルにおでこを付けて千尋さんは、
「んもぉー可愛すぎる。これ以上すきにさせないでよ」