CHIHIRO
見上げると、今日の客(多分)。
今日の客は初めて会うひとだから、いままで考えていた事を知らない人に知られたかと思うと、なんだか恥ずかしくなった。
「あぁ、たぶん僕です。」
「うん、たぶん君だ。」
その人はにかっと笑って行こうか、と言った。
ストリート系のような服装の、がっちりとした体格の良い男。
髪は坊主で、帽子をかぶっていて、メガネをかけているから顔はよく分からなかった。
並んで歩いて、普通のホテルに入った。
ベットに腰かけて、求められるのを待っていると封筒を差し出された。
「…え?」
開けて中を確認すると、ピン札の3万円。
「いいんですか?こんなに…?」
僕にはこれだけの価値は無いと思う。
ポケットの中のくしゃくしゃの5000円札が笑っている様な気がした。