CHIHIRO
いつもの千尋さんからは、想像もつかない表情だった。
「桜子っていうのは、俺が1年くらい前に付き合ってた親父の友達の娘で、俺の1個下の子なんだ。」
聞けば、政略結婚する予定だったそうで。
でも桜子さんは、浮気癖がひどくて千尋さんは耐えられなかったみたい。
さらに千尋さんは二男だから、誰と結婚にようが会社に影響はない。と言っていた。
「勘違いすんなよ?好きじゃなかった。」
千尋さんは念を押すように言った。
でも、その人じゃないとだめなんだよね?
僕みたいなガキじゃ…だめなんだよね?
僕のせいで千尋さんの親子の仲が悪くなるのは耐えられない。
「どっか飯食いに行くか!明日は日曜だし」
千尋さんはいつもの千尋さんに戻って、ご飯を食べに行った。
いつもの千尋さんに戻ってくれて、僕は安心した。
「ちーちゃん…」
「んー?どうした?」
車を片手で運転しながらこっちを向かずに答える千尋さん。
だいすきだよ。
「んーん。なんでもない」
なんだよー!と千尋さんはニカっと笑った。