CHIHIRO
千尋さんの事は、思い出したくない過去なんかじゃない。
まだ過去にすら出来てない。
「昨日も、今日も、逢瀬さんが来たぞ。」
やっぱり…
もう会えないよ。
まだ無理なんだよ…
「会ったの?千尋さんに。」
父さんは準備をしながら「あぁ」と言った。
「どうだった?」
何を話したのかな?
今になっては関係ない事だけど、あの時あれだけ気になってた事。
そんなに簡単に、興味がなくなるわけない。
「良い人じゃないか。心配してたぞ。」
千尋さん…
もう良いよ…
来なくていいんだよ。
「そう。…あのさ、」
僕はバイトの話をした。
店長に言われた事。
これからどうしようか、と。
僕は変わりたい。と。
「そっか。あまり無理をしちゃだめだ。身体が壊れるぞ。やっぱりちゃんと食え。」
父さんは、その事に関して自分の意見は言わなかった。
僕がやる、と言ったら応援してくれるそうだ。
ぞれから最後には必ず心配してくれる。