CHIHIRO
「食べても吐いちゃうんだ。喉通らないし。」
それでもいいから食え、と父さんは言った。
そして、「これが終わったらこれ。変え方はわかるな?俺は帰るから。針、抜くなよ」と言って帰ってった。
点滴の取り変え方は、引っ越す前に父さんに教わった。
1人でも大丈夫なように。
明日になったら、また新しい点滴をしなくちゃいけない。
僕は布団に寝っ転がりながら、枕元に置いてあった千尋さんと同じ香水を振りまいた。
千尋さんが、隣に居るみたい…。
ぼーっと過ごして、1つ目の点滴が終わってもうひとつのものに取り変えた。
だんだん眠くなってきて、僕は目を閉じた。
千尋さん、待っててね…
勝手だけど、嫌いにならないで…
離さないで、なんて言っておきながら、離れてってごめんなさい。
あの時みたいに僕は逃げるけど、今すぐに抱き返してほしいよ…
本当は今すぐ会いたいんだ…
千尋さん、会いに…