CHIHIRO

目が覚めると、父さんが居た。

まだ明るかった。


「点滴、とっくに終わってる。」


「お前、あれからずっと寝てたのか?」


ぼーっとして、頭が動かない。
もう日付が変わったみたい。


僕が寝たのは夕方だったから、12時間以上も寝ていたのか…


「睡眠導入剤だったからな。」

2個目の点滴は、眠りやすくするためのものだったらしい。

だからこんなに寝れたんだ…


「明日からバイトだろ?ゆっくりしてろ。」



それとなぁ。と父さんは続けた。

また今日も千尋さんが来たらしい。
昼休みの時間や、仕事が終わった後に来るみたいだ。

時間はばらばらだけど。




「会ってみたらどうだ?」


「いや!」


その場面を一瞬で想像した僕は、間の前が真っ白になって布団をかぶった。


「まだ会えない。まだ、こんな僕じゃ…だめ、だめ…まだ無理だよ…」



父さんの顔は見えないけど、きっと困ってるに違いない。

こんな風に父さんに感情を見せたのは、ないから






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