CHIHIRO
これまでの様に、千尋さんは面会時間終了まで居てくれた。
今日1日何してたとか、会社でこんな事があったとか、深い内容は無いけどそれだけで楽しい。
そしてその夜。
お腹が急激に痛くなって、
…破水。
ベットの枕元にあるナースコールを押して、壊れるんじゃないかってくらい強く握った。
陣痛が始まったから、分娩室に運ばれた。
父さんと百合子さんと千尋さんとお父さんとお母さん、タツヤに連絡がいって千尋さんはすぐに駆けつけてくれた。
立ち合い出産。
痛くて痛くて、唸る事しかできなかった。
陣痛の間隔がだんだん短くなってきて、頭が見えたらしい。
千尋さんは不安を隠せてなくて。オロオロしながら僕の手を握っててくれた。
自分の力とは思えないくらいの力が、千尋さんの手を握ってる手に入って、千尋さんの手の骨をきしませた。
でもそんな事は気にならなくて、ただただ唸る。
「はい、力んでー。」
先生の声なんて耳に届かない。