CHIHIRO
「ねぇ、どこかに行くの?」
百合子さんは言った。
「うん、薬局。今日は何も無いからすぐに帰ってくるよ。」
「そぅ。お昼ご飯は?要る?」
「ううん、要らない。ごめんなさい。」
百合子さんはご飯の事と、予定しか僕に聞いてこない。
赤の他人とは言え、同じ家にもう何年も一緒に住んでいるというのに。
その距離感だから、僕は百合子さんを好きで居られるんだと思う。
僕に深く追求しない。
それは百合子さんなりの優しさだろう。