CHIHIRO


あの男が、「小遣い、取っとけ。これに懲りてもうあんな事するんじゃねぇぞ。」と置いていった1万円札1枚と、財布の中の小銭。

行いの悪い子供に、教育してやった様な口ぶりは気に食わないけど…
いちいち気に食わない事を挙げてたらキリが無い事を僕は知っていた。




トイレの床に散らばったそれをかき集めて、僕は駅に向かおうと考えた。



それを全部拾い終わって、そこら中が痛い身体を障害者用の広めのトイレに設置してある鏡に映してみた。




外で殴られている時にすりむいた頬にすり傷ができて、血が出ていた。
漫画やアニメの様に、殴られた目の上が少し青くなっていた。
服にも少しだけ血がついていて、これで此処よりも街に繰り出す気にはとてもなれなかった。

かといって、着替えに戻る気にもなれない。
第一、家に帰るという選択肢はもともと無い。



僕は少しでもマシになるように、服を整えて商店街に戻った。

ただでさえ日曜日で、人が多いけど僕に親しい知り合いも居ないし唯一、会って困る人と言えば回覧板を置きにくるお隣のおばあさんくらいだ。


僕はいつだって独りなのと同じ。
所詮、人間関係なんてこんなものだろうと思う。
“その他”を僕はしらないけど…





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