CHIHIRO
2か月前のクリスマス。
百合子さんは僕にカップケーキを作ってくれた。
あまり食べない僕用の、手の平に収まるくらいの遠慮がちのカップケーキ。
甘いホイップクリームが乗っていて美味しかった。
でも喉に通らなくて、結局戻してしまったのは内緒。
僕が食べなくても、変に痩せたりしないのは
親父が週に1度、自分の病院で点滴をしてくれるから。
食べ物から取れる栄養は、全て透明の液体となってぼくの身体に直接入ってくる。
そんな事を考えていたら、猛烈な吐き気が僕を襲って
自動販売機の横で嘔吐してしまった。
胃駅と血が混ざって出てくる。
しんどくて涙が出てきた。
相手を探しているオヤジ達の視線を感じて、あぁ、今日はもう駄目だな、と思った。
仕方ないから諦めて帰ろうとした。
吐き終わってもせいせいしない身体をなかった事にして顔をあげた。
どこかで、水と歯ブラシを買おう。
口をすっきりさせたら、もう帰ろう。
こんな時でも、僕はなぜか冷静だ。
その時…