CHIHIRO
第四章
「はい。」
横から見慣れたペットボトルの水とポケットティッシュが差し出された。
とっさに耳にかけた髪の毛を戻しながら、差し出されたてをたどっていくと
知らない男の人が立っていた。
「はい。大丈夫?」
にっこりと笑った顔が僕に向けられていて、その声も間違えなく僕に対して発せられた言葉だった。
「あ、ありがとう」
僕は受け取ったティッシュで口をふいてから、貰った水を喉を鳴らしながら飲んだ。
ヒリヒリと喉の奥が痛くて、吐いた血は喉から出たものなんだ、と認識した。
ティッシュと水をくれた男は、うんうんと
やっぱりにっこり笑っていた。
ふぅーっ、と息を吐いて僕も一息ついた。
「ありがとう、あの…どうして?」
先ほどのおばあさんの時にも言ったが、僕に関わるとめんどくさいだけだろうに
なぜ僕に構ってくれる人が居るんだろう。
優しいのは、愚か、という事なのか?
僕にはまだ分からない。