CHIHIRO


どうして、という僕の質問に答えずに男はこう言った。


「もう何日も食べてないみたいだね?…おいで」



僕の汚物をちらっと見て彼は言った。
見ないで欲しかった。
恥ずかしい。



それに、おいでって…


彼はくるりと僕に背を向けて歩きだした。



でも僕は、まだお礼も出来てないし
「知らない人について行っちゃいけません。」とも
教えられていない。



たから、彼に従う事にした。




考えていた分の、少し離れた距離を取り戻すために
小走り気味に着いていく。




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