CHIHIRO


そういう行為をする、という事は僕の口を使うから
彼も嫌だろうと思う。
せっかく捕まえた(?)“良さそう”な客を逃したくない。
それに、この人はなんだか一緒に居て落ち着く。

僕の本能は、僕に正直だ。


でも、いくら水や歯を磨いたからって
見ず知らずの、顔に痣がある、ましてや僕の様な汚い娘を
よく買おうと思ったなぁ、と感心してしまった。
…自分で言うのもおかしいけど。



そのまま、僕も喋らずに前だけを見ていた。

同じ車線側にコンビニが見えて、彼は僕がお願いした通りに入ってくれた。


「じゃぁ、ちょっと買ってきます。」

「いや、俺も行くよ。」



この人は、僕が怖気づいて逃げる、とでも思ったのだろうが
僕は逆だった。

僕がレジをやってもらっている間に、この人が逃げるんじゃないか?
そう思っていた。


やっぱり、僕が気持ち悪くなったのだろうか?
気が変わって、こんなところに置いていかれたら今の僕には歩いて駅まで行って、帰る元気は残ってない。



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