CHIHIRO
僕が彼の隣に居る事自体、間違いなんだ。
彼は相当お人よしだと思う。
誰も僕なんかにお金を払おうとは思わないはずなのに、
僕が此処に居るのは、おこがましい。
それでも何にも言わずに、受付を済ませた彼に「こっち」と言われて着いて行く。
カードキーを差し込んで中に入った。
僕は彼に一言言って洗面台に向かった。
広い…。
金色の縁に囲まれた鏡に映っている僕は、それと対照的。
歯を磨こうとして歯ブラシに歯磨き粉を付けた時に、やっぱり、と思った。
備え付けの歯ブラシが目に入る。
なんだか、彼と居ると落ち着かない。
自分がどんどん惨めだと知らされてしるような気がしてならない。
歯を磨き終わって、ベットが置いてある空間に戻ると
彼がこちらを向いていた。