CHIHIRO


絵になっている。

高そうなスーツを、少し崩して着こなしている。
少しパーマのかかったこげ茶色の髪はちゃんとセットしてある。
モデルのようにキメ細かい肌と筋の通った鼻。
若干キレのある目は、くしゃっと笑っていたから気付かなかった。
男らしい胸板の厚い、鍛えられたそらっとした身体。
程良く筋肉がついていて
一瞬でこの人は、女に困ってないだろう、と確信した。


「あの、さっきから。ありがとう」


僕はこの人に「ありがとう」しか言ってない気がする。


「いえいえ」

また彼はにこっと笑いながら言った。
すごく、綺麗に笑う人だな、と思った。



「で?なんであんな所に居たの?」

今度は彼から口を開いた。
なんで、ってそんなの。
聞かなくても分かるくせに…


「探してたの。」


客を。




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