CHIHIRO
僕は百合子さんに「うん、おやすみ」とだけ言って
親父の寝室に向かった。
ドアの前に立って3回ノックをして部屋に入る。
「ん。これ。」
僕はポケットから少しシワになった4000円を渡した。
親父は何も言わずに受けっとった。
「おやすみ…」
親父の寝室を出て2部屋隣の自分の部屋に入る。
洋風の作りに似つかわしくない敷きっぱなしに布団。
カーテンと窓が閉めたまんまの真っ暗な部屋。
ほとんど寝るだけだから家具は必要なかった。
電気は付けないで枕元に置いてあるスタンドライトを付ける。
「はー…」
疲れた。
気持ち悪い。
ひどい吐き気。
布団に入って自分の身体を触る。
ところどころにかさぶたが出来ていて
ボコボコの汚い身体…
こんな僕、だれも愛してくれない。