CHIHIRO
玄関を入ると、百合子さんは来なかった。
百合子さんの靴はあるし、出かけてるんじゃないみたい。
そっか、今日は百合子さんの日か…。
珍しいな…。
僕は何も言わないで部屋に行った。
敷きっぱなしの布団の上で、ちかちかと光る携帯。
布団の上に座って、昨日ぶりに開いてみた。
客、客、客、客…
ほとんど昨日の客の着信だった。
「こわ…」
電話にも出なかったから、あんなに怒ってたんだ。
僕は理不尽なキレ方をされて、殴られたにも関わらず冷静だ。
静かに携帯を閉じて、少し寝ようとした時だった。
「あぁ…!孝治さん!」