CHIHIRO
百合子さんの、女の声が聞こえた。
そう。
今日は百合子さんの日。
百合子さんはきっと、親父の事が好きなんだと思う。
親父もきっと、母さんより百合子さんが好きなんだと思う。
僕の隣の部屋は、親父と百合子さんの為の部屋。
親父の仕事が休みの日は、百合子さんの日。
「……もっと…!」
僕の帰りが遅いと思ったのか、
それとも僕の事なんか忘れているのか、分からないけど
僕はこの時間がすごく嫌い。
僕もこうなのだろうか…
汚い。
汚らわしい。
気持ち悪い。
隣の部屋から聞こえる百合子さんの声が、僕の耳に響いた。
声は消えなくて、僕はさらに吐き気を覚える。
急いでトイレに駆け込んで、戻してしまった。