CHIHIRO





ひどい吐き気に襲われて、僕は目を覚ました。

時間を見ようと携帯を開いたら、液晶が眩しくて目を細める。


はっきりしない、かすれている目を擦りながら確認すると朝6時だった。

結局2時間くらいしか寝ていない。


今日は10時から予定があるのを思い出し支度を始める。


なんとも言えない倦怠感を無理矢理無かったことにして身体を起こす。




シャワーを浴びに風呂場に向かうと
途中のリビングで百合子さんが、朝食の準備をしていた。

百合子さんは目をこちらに向けて「おはよう」と言った。


「おはよう。」


僕もあいさつを交わす。


「早いのね。眠れなかった?」

「ううん。たくさん寝たよ」


なんとなく、百合子さんには心配してほしくない。
この家にいれば、誰だってストレスが溜まると思う。
百合子さんは“それ”を一切顔に出さない。

百合子さんは優しく笑うとまた朝食の準備に取り掛かった。



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