終業チャイム
正直、あの放課後から妙に意識してしまい、このままではいけないと思い完全に気にしないことにした。
木なんて誰だって見るし、
谷田があたしのこと見てるわけないし、
頻繁に当てられてると意識したこともない。
なので、メアドなんてもってのほかだ。
「聞いてないのー?もし谷田のメアド持ってたら、休み中も会えるかもって思ってたのにー」
「はいはい、じゃ明日学校でね。」
由希子を適当になだめて教室を出ようとした瞬間、谷田と目があった。
“見られてた”という可能性を考えたくなくて、すぐに目をそらして何事もなかったかのように教室を出た。
しかし思考はとても正直なもので、
たかだか目が合ったというだけなのに、今までフタをしていたものが思考回路を巡り巡って一気に溢れた。
“なんとなく奈緒のこと気にしてる感じだもんね!”
バカ言え。そんなことあるもんか。
“なんとなーく奈緒の席見てるしぃ、けっこう教科書読みに当てられるしー”
そんな子供みたいなこと、30を過ぎた男がするか。