終業チャイム
「教え子」
思わず止まってしまった。
変な質問をしたことをひどく後悔した。
みんなと同じ位置から、交際、結婚まで上り詰めた女性がいる。
溢れて止まらない気持ちに、一気に痛みが走る。
なにを自惚れていたんだろう
あたしの思いなど、叶うわけがないのに。
「関係ないことばっか聞くんじゃねぇ。」
いつもの低い声、砕けた口調。
溢れてしまった感情のせいで、いつも聞いているはずのその声に胸が高鳴った。
「宿題続けるぞ」
「あっ…あたし、まだ先生の話聞きたい!」
「あ?」
なにを言っているんだ、あたしは。
馬鹿か?
…馬鹿か。
それでもいいから、
「せ、先生の話、聞きたい…です。」
この思いごと、あたしを殺してくれないか。
「……じゃ、ちょっと休憩な。」
谷田が持っていたペンを置いた。
響くチャイム
この心臓の音をかき消してくれるよう、祈った。