終業チャイム
終業チャイム
聞きたいこと、聞きたいこと…
自分からとっさに出てきた発言のせいで、あたしは宿題を進めるよりも頭を抱えた。
「おもしれー話なんかねぇぞ。」
谷田の言葉に急かされる。
正直、教え子だった奥さんとの馴れ初めから聞きたいものだが、その時あたしはどうなってしまうのかが怖かった。
しかしこんなチャンスは滅多にない。
でも、痛いのは嫌いだ。
「奥さんとの馴れ初めとか…」
好奇心に負けた。
震えた喉から出た声はもっと震えていて驚いた。
「…そんなの聞いてどうすんだ。」
「ほら、生徒と教師の恋って軽い憧れ…じゃ、ないですか…」
由希子の言葉を思い出して言ってみた。
あたし自身、そんな憧れなどこれっぽっちも持っちゃいないが。
口に出してみると、生徒であるあたしが谷田という教師に言ったせいか、告白っぽく聞こえる気がして相当恥ずかしくなってきた。