終業チャイム
考えたように黙り込んだ谷田は、少しするとゆっくりと口を開いた。
「俺が24の時なんだが、初めて担任で受け持った3年のクラスに、俺にえらい懐く生徒がいてな、」
24で担任を受け持つことができるのだろうか、と考えたけど口には出さなかった。
恐らく、新米の頃から授業や対応で人気が高かったのだろう。
「そいつに、卒業と同時に告られたとこからだな。」
生徒が、教師に告白。
そんなことが現実にあるとは思わず唖然とした。
「すごい根性…」
「ガッツだけはあんだよ」
そう言って細めた目はとても懐かしそうで、そして少し寂しそうだった。
「…先生は、その子が好きだったんですか?」
「あー?まぁ、一番近くにいた奴だったからな。生徒の時はひいきだのなんだのうるせーから、あんまそういう態度はとってなかったけど。」
直接的な単語は出さないけど否定はしない。
つまり、好きだったんだ。