終業チャイム
夏休みが明けて学校に来てみると、いつも眺めていた木が切られてなくなっていた。
景色はどこかすっきりしていて、それと一緒にもの悲しかった。
心にぽっかり穴が開いちゃったような感覚。
日差しが刺さる。
もう少しで学校祭だ。
「奈緒ー?遅刻しちゃうよー」
あの日のことは、由希子には秘密だ。
谷田はきっとすぐにあの日を忘れてしまう。
だから谷田の分だけあたしが覚えて、一生の秘め事にするつもりだ。
学校祭が終わったら、テストがある。
歴史の勉強しなくちゃ、とか思いながら、あたしはホームルームを知らせるチャイムの鳴る学校に駆け込んだ。
Fin.