終業チャイム
女教師は笑いながら、「谷田先生が自らチェーンソー持って切ったのかと思った」と笑った。
「でも、どうしてですか?切るのを急かすことも、事務員の方ではなく谷田先生が業者さんを呼ぶ必要もないじゃないですか。」
思い出すのは、夏休みの1日目。
シャツに染みた少女の涙と、繋がった手の暖かさ
それらのひとつひとつがあまりにも優しかったので、気付かれないように涙を流した。
しかし自分と相手の立場を考えると、あの日の出来事は忘れなければならない。
それにはまず、同じ時間に同じ空間で一緒に眺めた木を無くすことしか思い浮かばなかった。
校長とか教頭とかに頼んで、伐採を早めてもらった。
えらい自己中かもしれないが。
切られている時に舞う木屑の中でも思い出すのはやっぱりあの日の事で、
あの日もこの名残惜しい思いも全て、屑となって吹き飛べばいい と願った。