終業チャイム
「そういえば、吉田先生の体調も順調に回復に向かってて、学校祭までには間に合いそうなんですって。」




ほらな、やっぱり名残惜しい。

もちろんこれは少女に限ったことではないが。



「…そうですか」


そろそろ予鈴がなる。


吉田先生の復活の報告をしねーとな。




俺は久々に左手の薬指に指輪をはめて職員室のドアに向かった。




「珍しいですね、結婚指輪しているの。」



いろんなところに目がいく女だ。





「ある生徒が、泣きながら“離婚しちゃだめ”ってうるさいんで。」




本当によく家内に似て、ガッツのある生徒だ。




そのまま職員室の扉を閉めた。






廊下に出ると、間もなく予鈴が鳴るというのに騒いだ生徒達がたむろっている。





「もう予鈴鳴んぞ、教室戻れー」




適当に声を掛けながら教室に向かう。


すれ違い様に教室に駆け込む生徒達の手に、見覚えのあるものを見かけた。






スイカバーと、メロンバー。






響くチャイム




少し涙が出たのは、きっと木屑のせい。








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