終業チャイム
ここ数日、ずっとその事を感じさせることばかり言っていた。
「なんで」
「もうわからないの。結婚するってことの美しさも、家族をつくる暖かさも」
何かと思えば、なんてちっぽけな理由。
くだらなくて笑える。
「あなたに愛されてる自信がない。いつもわたしばっかり好きで…」
内心、ギクリとした。
浮かんだ顔はもちろん、切られた木の前に立ち尽くしていた少女。
泣きべそをかく妻の顔を見ると、やはりどこか重なって見える。
言動は両極端なほどなのに。
「思ったの。わたし…」
妻の潤んだ瞳が俺を捉えた。