終業チャイム


こいつのガキっぽさにはほとほと呆れる。

俺が26んときでもこんなんじゃなかったぞ。


でも、まぁ





「だけどな、それはキッカケにすぎない。お前は憧れだけで俺に人生よこしたんだ」





“もしもあたしが懐いていたら、先生はあたしを好きになってくれますか”




言うとおりだよ。







「ざけんな。今更返すつもりもねぇよ」








途端に妻が、堪えてた涙が溢れ出して俺の胸に寄り添ってきた。


俺は包み込むように背中に優しく腕を回した。




体温も、匂いも、補習のときとはまったく違うけれど

体に染み込む、彼女の涙のぬくもりだけがとても愛おしく感じた。



「好き」という言葉だけ、互いに厭きることなく繰り返し


その言葉を決して告げることのできないひとりの少女の顔を思い浮かべては、

発した言葉の数だけ流れた、涙。





‐fin‐


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