終業チャイム
「気にしてるって…なにが?」
「なんとなーく奈緒の席見てるしぃ、けっこう教科書読みに当てられるしー。」
「そんなことないよ。」
くだらねー…。
心底呆れたが、由希子の目が本気だから困る。
「奈緒も谷田に興味あるんならメアドでも聞いてみればー?」
「聞かないよ…、聞いてどうすんの。」
「教師と生徒の恋って軽い憧れだよねー!しかも谷田って妻子持ちだから不倫になるの!このキケンな感じがドキドキしない?」
「しない。」
きっぱりと言ってやった。
完全に人事だ、こいつ。
「そんなにドキドキしたいなら由希子がやればいいじゃん。メアドでもなんでも聞いてさ。」
「…教えてもらえなかった。」
この子の行動力の速さには脱帽する。
「だから奈緒が聞いてさー、谷田のメアドゲットできたら私に教えてよー」
「だからあたしはっ…!」
その瞬間、校内にチャイムが鳴り響いた。
時計は夕方6時を指している。
部活をしてない一般生徒はさっさと帰れ、という合図だ。
入学当初から思っていたが、一般生徒はよっぽどでなければ誰も残らない学校で、こんな時間にまで帰宅を促すチャイムを鳴らすなんて律儀にも程があると思う。