君に届け【短編】
 
 
どうやら、先輩も買い物に来ていたらしく、先輩の隣には大地先輩が。
 
 
あたしはまずい!と思い、仁兄に必死に言う。
 
 
『仁兄っ!帰ろ!!』
 
 
「は?もういいわけ?」
 
 
『う、うん!』
 
 
仁兄は少しダルそうに立ち上がる。そのゆっくりな行動にイラ立ち、仁兄の腕を引っ張った。
 
 
『遅いっ!早く!!』
 
 
「ったく。煩せぇな」
 
 
仁兄がようやく立ち上がったところで、腕を引く。
 
 
そーっと後ろを振り返って見た。
 
 
 
"バチッ"
 
 
 
目が合った。しかも、完璧に…。先輩はじっとあたしを見てくる。
 
 
ヤバイっ!
 
そう思い、目をそらした。もう目を合わせてられなくて。
 
 
また仁兄の腕を引き、あたし達は急いで帰ろうとした。
 
 
 
この時、もう1回振り返ってれば、先輩の悲しそうな、悔しそうな顔が見れたのに。
 
 
あたしと仁兄は、由枝姉と合流し、そのまま仁兄の運転する車で家へと帰った。
 
 
 
…はぁ。どうしよう…。先輩のこと無視しちゃった。なにか、言えばよかったのかな?
 
でも、なにを言えばいいの?"先輩も買い物ですか?"…とか?
 
 
そんなの…あたしには無理。言う勇気がない。
 
 
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