月待ち人
休み時間に1人でボーッとしてたら奥出くんに肩をはたかれ、笑顔でメモを渡された。
『放課後、喉に刺さった骨を抜くから手伝って』
意味不明な言葉
指定された通りに行ってみると奥出くんが苦笑しながら待っていた。
「奥出くん?」
彼は声を発する事なく小さく頷いた。
そして静かに口を開いた。
「………を、キラ……くださ……」
かろうじて聞き取れぐらい、近くにいなければ無理。
「オ・レ・を・き・ら・っ・て・く・だ・さ・い」
なんで…キライにならないといけないの?
「せっかく仲良くしてるのにキライになんてなれない」
はっきり言うと彼は悲しそうに笑っただけだった。
「………」
今度は何も聞き取る事が出来なかった。
奥出くん、あなたは私に何を隠してるの?溜め込まないでちゃんと教えて…
「……っ」たまらずに抱き締めた彼の肩は小刻みに震えて私の肩口は少しずつ濡れていき泣いているんだとわかった
「奥出くん…大丈夫だから…ねっ」
気丈な彼が、こんな風になるなんて思いもしなかった。
「………り……と」
彼は私にありがとうと告げると、ゆっくりと立ち去った。
奥出くんと話すと…彼に触ると…彼を考えると心が痛くなる…
これは病気なんですか?
< 16 / 21 >

この作品をシェア

pagetop