月待ち人
「桜月ちゃん…ううん……ツキ…大好きだよ」
そのまま振り返った倉本くんの唇が私のソレに重なった。
ツキ…ツキ…懐かしいけど…何かが違う。
違う…そうに呼んでいいのは彼だけ…君じゃない
「…違う…やめて…イヤだ」
「どうしたの桜月ちゃん」
気持ちのコントロールができない。
どうしようも無くてイヤになる。
放課後の教室…

私の喚き声と倉本くんの悲痛な声が教室中を支配していた。
「ツキって呼ぶな…イヤだぁ……あんたなんかに呼ばれたくない…やめろぉぉぉ」
「わかった、ゴメン…もうよばないから、落ち着いてよ。桜月ちゃん……奥出が羨ましかっただけなんだよ」
奥出くんが羨ましい…
なんで彼の名前がでてくるの?
「桜月ちゃんが唯一…ツキって呼んでも怒らないのは奥出だけなんだよ」
奥出くんが…私を?
藤野じゃなくてツキ
下をむいたまま倉本くんはゆっくりと口を開き言葉を紡ぎはじめた。
「最初はチャンスだって思ったんだ…二人の間に割って入る隙ができたし、でもあいつが…あんなに苦しむなんて思わなかったんだ」


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