桃色チェリー
「あんた、生意気なのよっ!」
そう叫ばれたとともに、鋭い衝撃が頬に走った。叩かれたのだと理解すると同時に、あたしはその場に立ち上がる。
そして、あたしより十数センチ背が高い彼女の頬を、殴り返してやった。もちろん思い切り、パーじゃなくグーで。
「……っ、」
その刹那、その場にいた全員が固まったのは言うまでもない。だからそのままあたしは倉庫から出ようと歩き出したのに、我に返った男子の先輩の1人にあっという間に捕まってしまった。
力が強かった、ってのもあるけれど。
ただあたしが、思い切り殴り返せた満足感で油断しまくっていたことが、1番の原因なのだろう。
「ヤキいれたくて呼び出したのよ。このまま帰すわけないじゃない。」
あたしが殴った方じゃないもうひとりの女の声が、薄暗い体育館倉庫内に響いた。