桃色チェリー
そこからはもう、普通にいじめ。
だいたい、4対1で敵うはずもなかったんだけどね。
髪は引っ張られるし、床にたたき付けられるし、モップで殴られるし。
しまいにはいつ準備して来たのか、バケツの水までぶっかけられて。
「いい気味。」
「こっちの方がお似合いよ。」
ふざけんなって、そう思っても、言い返すのはめんどくさいし、歯向かうとエスカレートするのはわかってた。
いつ終わるかわかんないリンチを、床に倒れたまま、ただ堪える。笑い声や罵倒が耳障りだったけれど、聞こえないフリして目を閉じた。
――刹那、
「芽梨っ!」
耳に届いたのは、大好きな人の声と、ガラララ、と響く倉庫のドアの音。
少しだけ身体を起こして視線を向ければ、やっぱりそこにいたのは莱だった。
呼吸が若干乱れている様子から、走って来てくれたんだなと推測する。