桃色チェリー
「何、やってんの?」
「古矢……、」
珍しい。莱が何だか、怒ってる気がする。
こんな状況だけど、莱があたしのために怒ってくれるのが嬉しかった。
「4対1とか、最低ですねー。センパイ。」
薄暗い倉庫内、莱のエメラルドグリーンの瞳があたしを囲む4人の先輩達を捉える。
あまりにも澄んだ瞳が、何だか異様で怖かった。でも一方で、窮地のあたしを救ってくれるヒーローのようで。ぼんやりしてきた意識の底で、思わず笑みが零れる。
「やっぱり喧嘩は、1対1じゃなきゃダメですよっと、」
そしてそう言うや否や、莱は近くにいた男の先輩1人を軽く殴り飛ばした。施設内での噂で、実は莱は見た目以上に強いというのは聞いたことがあったけど、まさか本当だったなんて。
「古矢には関係ねーだろっ!」
「芽梨が関係した以上、無関係とは言えないのでー、」
莱に殴り掛かって行ったもう1人の男の先輩も、莱の手によって一撃でノックアウトされた。