桃色チェリー
「……さーて、センパイ方はどうしますー?この2人みたいになりたいですか?」
「い、いいえっ、」
女の先輩2人は、莱の一言で顔色を変えて逃走。倉庫内にはあたしと莱と、のびた2人が残された。
「芽梨、」
「莱、助けてくれて、ありがとー。」
跳び箱にもたれ掛かって座るあたしの目の前、莱は視線を合わせるように屈む。そう言ってあたしが口角を持ち上げれば、莱は困ったように笑った。
「助けてなんかないだろ。一足遅かった。」
「そんなことない。来てくれて、嬉しかったよ。莱は芽梨のヒーローみたいだね。」
「ヒーローって……」
莱の到着は、別に遅くなんかない。
あたしは誰にも、呼び出しの話はしてなかったわけだし。
それに、これだけボコボコにしてくれれば、もうあたしも目をつけられないでしょ?莱があたしを助けてくれるから。相手をやつけてくれるから。
…――あたしには莱がいる。
莱はあたしにとって、ヒーローなんだよ。