桃色チェリー
「芽梨ちゃん、莱君はまだここに慣れてないから、芽梨ちゃんが色々教えてあげてね。」
「……なんで、めりなの?」
「芽梨ちゃんが1番大きいでしょ?芽梨ちゃん、できるよね?」
「うん。」
先生と話しながらも、あたしの目が捉えるのはその子の姿だけ。さっきとは違って、真っすぐあたしを見る莱君の瞳にあたしの顔が映って、何だか莱君の瞳に吸い込まれそうな気がした。
「ほら、莱君。芽梨ちゃんに自己紹介してごらん。」
「……ふるや、らい。」
「あたしは、あいざわめり。4さい。」
あたしがそう莱君に話し掛けるのを見届け、先生はその場から遠ざかっていく。
「らいくんは、なんさい?」
「……5さい。」
「じゃあ、めりよりおにいちゃんだね。」
だからあたしはただ、無表情な彼にひたすら話し掛け続けた。