桃色チェリー
でも、莱君は人見知りなのか何なのか、全然会話なんか弾まなくて。あたしより年上だというのに、まるでそんな感じはしなかった。
話は続かない。
まったく、表情は変わらない。
あたしの性格上、普通だったらそんなのにいつまでも関わってられる訳なんかなかったのに。
彼には、違った。
どんなに会話が進まなくても。
笑っているのが自分だけでも。
キラキラした莱君が傍に居てくれるのが、何だか嬉しくて。
莱君が少しでも口を開くのが、先生の他にあたしだけだと気づいてからは、何とも言えない優越感があたしを満たした。
まるで傍に居ていいと許されたのが自分だけのようで、それはただの自意識過剰にしか過ぎなかったのだけれど。
それでも莱君の傍にはあたし。
施設内で確立したその立場が、4歳のあたしにとって何だか誇らしかった。