杏 ~あんず~
俺は莢乃の表情を確認しようとしたが、莢乃はうつむいていて、前髪で隠れてたから、どんな顔をしているのかは分からなかった。
「そして何より、裏表がない。」
少し嫌味っぽく言ってみたが、莢乃の体勢は変わらなかった。
「俺先教室戻る。」
莢乃を屋上に残し、ドアノブに手をかけた。
莢乃は追って来なかった。
…まぁいいか。
廊下を歩いていると、前から自販帰りの杏を見つけた。
先に俺に気付いたのは友達のほうだったけど…。