杏 ~あんず~
「てめぇ杏に何言ってんだよ!!」
「ちょっ……やめなよ達也!!」
今にも殴りかかりそうな達也を、必死に帆乃香が止めてる…。
でもそんなのどうでもいい……。
今は大翔の言葉で精いっぱい……。
できるなら現実逃避したいよ……。
あたしはただ呆然と大翔を見ていた。
「何だよ。俺が言ったことは事実だろ?」
……事実……。
「……あ、そうそう。チェンメのことだけど。」
もうこれ以上何も言わないで……。
これ以上混乱させないで……。
「あのチェンメの発信源、俺だから。」
………もうやめて…!!
「ガキの頃からの恨み、晴らさせてもらうからな。」
大翔はあたしの横を通り過ぎた。
すれ違いざまに何か言ってたけど、あたしには何も聞こえなかった……。